「跡部ー。プリントみせてー」


「・・・」




たのしいたのしい休み時間がおわってしまうと、次の授業のプリントを全然やってないことに気付いた。焦って左隣にいる跡部に頼んだら、跡部はチラリとこっちに視線をむけたものの、何の返事もしてくれなかった。




(なんだこいつあたしのこと好きなくせに)


ちょっとムカッときたけど、別につっかかる気分でもないので右隣をむいたら跡部のことを気に入っている女の子があたしのことを睨んでて、いつも寝ている前の席の子はあいかわらずの大爆睡だったのでプリントはあきらめた。









こういう時にかぎって、自分があたってしまう日だなんてお約束だ。
だんだん近づいてくる順番と、神経質そうな先生に焦りを覚える。

まず左をむいたら、跡部はこっちをみようともしない。
右を見れば、意地悪そうな笑顔があった。


しかたがないので、もう一回左をむいて



「あとべー」と小声で呼んだ。


「あとべー。」

「・・・」

「あーとーべー」

「・・・(うんざり)」





右から聞こえる情けない声は都合の良いの十八番だ。


こいつ、さっきまで楽しげに他の男と話してやがったくせによ。
プリントとともに俺を思い出しやがった。





都合の良い人間の代表格の様なこいつは俺をいらいらさせる。





「ねー、あとべー」

「・・・」

「・・・ねー」

「・・・しつけー」




しつこさに痺れをきらして苛立ったまま、俺は手元にあったルーズリーフに適当に答えを書くとに手渡した。



「次、ー」

「はーい、えーっと」



さっきとはうって変わってニコニコした笑顔をうかべた調子のいいは俺がわざわざ違う答えを書いたプリントを丁重に読み上げる。
くそ真面目な顔で、俺の答えを間違いだと疑いもしないで。



でたらめな答えに腹をたてた教師にひとしきり怒鳴られたはまた真顔で口を開いた。





「・・・これ跡部くんに解いてもらったやつなんで」









果てしなくバカで可愛いなんてこんなの恋以外の何物でもない



人の責任にするんじゃない、教師の怒鳴り声とともに俺の身体の芯は少し疼いた。





2007.04.05 ありがとうございました!  ヒナ(マシュデリ)