なんだか、本当の別れの言葉のような気がして











君を巡る










「好きだよ、




不意に電話口から届いた愛の言葉。
一瞬何が何だかわかんなくて、呆然と言葉の意味を考える。
やっと意味が理解できて回答したかったのにその前に電話を切られた。



・・・って、勝手に切らないでよ!



そう思いながらも紅く染まる頬はどんどん色付いて、鼓動の速さも速くなっていく。
でも、体とは反対に頭は冷静で、次にどんな行動をとらなきゃいけないのか理解してる。
電話の向こうの彼・・・不二の声が少し悲しそうだった事も、これを逃したら永遠に別れる事になりそうな事も。
私は不安な気持ちを抱えたまま、どこに居るかわからない不二の元へ駆け出した。


駆け出したは良いものの、どこに行けば良いのかわからない。
不二はどこに居るの・・・?
わからなくて自然に足が止まる。


立ち止まっていてもしょうがない。
見つけ出さなきゃいけないんだ。

決心を固め、再び駆け出す。
不二に関連するところを手当たり次第巡っていく。
まずは不二の3年間といっていいテニスコート。次は6組。
その次は、生徒会室。・・・生徒会役員じゃないのに、よく手塚をからかいに来てた。
走る、けど、万年帰宅部の私は早くもバテそうで、足が思うように動いてくれない。
焦る心と重くなる足。このふたつが比例していって私を悩ませる。





自分でわかる不二の行きそうな場所の最後のところにつく頃、私の足取りは早歩き程度の速さになっていた。
最後の場所は、レギュラーがいつも集まっていた屋上。



重苦しい音をたてながら屋上の扉が開く。
目の前にはオレンジ色が混ざり始めた空が広がっている。



「不二・・?」



求めた返事は返ってこなかった。

ここが最後なのに・・・。


泣いてしまいたかった。
泣いてここから大声で不二を呼べば出てきてくれる、そんな気までしてくる。




「・・・っ馬鹿やろう」




ポツリと呟いた。



「あれ、?」
「・・・なんだ、菊丸か」
「もしかして泣いちゃったりしてる?」
「してない。・・・ねぇ、菊丸。不二知らない?」
「不二?なんか、始まりの場所に行くとかなんとか行ってたぞー?」
「始まり・・・?てか、なんで菊丸はここに居るわけ?」
「え、あぁ、ここでお別れ会するんだって」
「へぇ、そう。じゃ」



菊丸の返事を軽く聞き流して、立ち上がった。
考えるのは“始まりの場所”
屋上を出た私は、歩きながら始まりの場所を考える。



オレンジ色に染まる空が私を照らした。
陽射しが眩しくて眼を細める。

それと同時によみがえってきた、ある記憶。



『それじゃ、ここが僕たちの始まりの場所だね』
『そうだね。ここが始まり』



この会話をしたのはいつだっただろう。
いつかは覚えてなくても、どこかはわかる。

あの時、こんな眩しい陽射しの中、私たちは出逢った。
不二は部活、私は委員会を抜け出してサボってて、イメージと違うねって話した。
そこから不二と仲良くなった。



なんでわからなかったんだろう。
あの場所が“私と不二”に1番関連する場所だったのに。




足が自然と速くなる。
早く、早くあの場所へ。



「不二っ!」



教室の窓から始まりの場所へ降りる。
ここは一握りの人しか知らなくて、先生も見回りにこない。
だから絶好のサボりポイント。



「・・・
「やっ、と見つけ、た・・・」



息を切らしながら座り込んでいる不二を見る。
不二は私を見ながら悲しそうに笑った。




「本当に君は僕の期待を裏切るのが好きなんだね」




自嘲と共に零れた言葉は私を打ちのめした。
不二は・・・私にここに来てほしくなかったの?

私は来ちゃいけなかった?



「・・・ごめん、ね」
は本当に酷い子だよ・・・」
「ごめ・・・」



言い切らないうちに不二に抱きしめられる。
いきなりの事に驚いて声が出なかった。



がここに来なかったら、諦めようと決心してたのに。なんで来ちゃったんだい・・・?」



耳にかかる声は少し震えているようで、こっちまで涙がうかんだ。




「好きだよ、




もう1度、同じ言葉を囁かれる。
私は少しだけ間を置いて、「私も好きです」と答えた。















諦めるなんて言わないで。私も貴方が好きだから。


暖かい作品になっているでしょうか?
この作品が貴方様に気に入ってもらえたら光栄です。

遥音