「はぁ〜・・・」


「ふはぁ〜・・・はぁ〜」


「はぁぁぁ〜・・」





このように、
最近隣に座る彼女の様子が少々おかしいのです














気付けば溜息 恋患い
















中休みを伝えるチャイムが鳴ると同時に隣の席の柳生に話しかけられた

さん。失礼ですがちょっとよろしいでしょうか?」
「ん?あ、はいはい」
「最近体調が悪いとかありますか?」
「なんで?」
「いえ、最近溜息のようなものが多いので体調でも悪いのではないのかと思いまして」
「いや、特に体調は問題ないよ」
「それならよろしいのですが」
「心配してくれてありがとう」
「いえ、こちらこそ突然申しわけありませんでした」


なんて柳生に話しかけられた!!!!
平然を装い会話するのもすごく大変なんですけど!!
しかも溜息!?
柳生に聞かれてたのか!?

いやいや・・まてまて自分・・・
確かに柳生は隣の席だから私のどうしようもない溜息に気がついて当然かもしれない


恥ずかしい事この上なし!!!


柳生にあんな事言われて心配されて嬉しいけど
まさか・・

「柳生の事を考えると胸が締め付けられて苦しくて溜息が出るの。
 これって柳生に恋患いってやつです!テヘ」

なんて言えるわけないじゃん!!!
んな事片思いの相手に言える人見てみたいよ!!





3年になって同じクラスになった時
最初はただの変な人って印象だった
言葉使いも、眼鏡も・・。
あの人気者が集まる強豪テニス部の中でも浮いてるんじゃないかと思った

でも・・・



ある日の放課後友達に連れられて見学に行ったテニスコート
周りの黄色い声援に頭が割れそうになりながら私の目に映ったのは
テニスボールを打つ瞬間の柳生
変わったフォームから打ち出されたのは
目で追う事ができない程のスピードのあるボールだった。
それは後で柳生に聞いたら”レーザービーム”という名前の技だったらしい。

いつもとは違う柳生の姿に私は釘付けになった
ボールを打つ時や打った後の綺麗な姿勢に胸が高まった



その時から私の心臓は柳生の為だけに恋の脈を打つ
それは溜息という名の恋患い





「はぁ・・・」
また出る溜息
この溜息はきっと恋が呼吸をしてるんだと思う。
呼吸をしないと息が詰まりそうなほど胸が締め付けられる恋
だから私は今日も溜息をつく



「また・・・溜息ですか?」
「うわわ!柳生!!」
「どうかされましたか?」
「いや・・!急に話しかけてくるから・・!」
「それは申しわけない。ですが今は授業中ですよ上の空のようでしたので」
「あぁ・・・すいません・・」
「いえ、今日の日付ですとさんがここの問題に当たる確立が高いですよ」
「えぇ!?や、ヤバイ・・!それはヤバイ!!」

今は英語の授業中
英語担当の先生はすごく厳しくて有名
問題に答えられないとどんな罰をさせられるか!


「ではここの問題を・・今日の日付は・・・ふむ。!この文章を訳せ」


きたーーー!
きちゃった!!!
しかも全然聞いてなかった!!!


アタフタとする私に


「私はずっとあなただけを見てました。付き合ってくれませんか?」


と柳生が囁いてきた


私の心臓は普段の仕事を忘れたかのように早く動き
私の顔を真っ赤に染め上げていく






「わ、私も柳生が大好きだから!!」





緊張と突然の柳生の言葉に私は大声で叫んでいた



教室の重い沈黙にふと我に返る



先生を見るとワナワナと震えているし
クラス中は笑いをこらえる皆の姿

よく問題文を読むと・・・・
訳が”私はずっとあなただけを見てました。付き合ってくれませんか?”
なのである・・・。

柳生が囁いたのは丁寧にもこの訳の答えを教えてくれただけで・・・
勿論私への告白ではないのである





ーーーーー!!!廊下に立ってろ!!!!!」
先生の怒声に廊下へ急いだ
柳生の隣にあのままいるよりはマシだ

誰もいない廊下に立つとその静けさから無性に悲しくなってきた
勘違いで告白なんてしてしまった・・・・
きっと柳生は大迷惑だろう




「かっこ悪いよ自分・・・・はぁ・・・」



大きな溜息を一つつく。





「また溜息ですか?」
「はい、溜息・・・・って!?柳生!?な、なんでこんな所にいるの!?」
だって今はまだ授業中だし・・・・
優等生の柳生が廊下にいるなんて・・!

「私も廊下に立ってろと言われましたので」
「はぁ?柳生が!?・・・なんか間違えたの?」
「えぇ、間違えてしまいました」
「・・・でも、柳生がそんなんで立たされるなんて・・・」
「さきほどの訳で、私はあなたと同じ答えをしてしまったのです」
「・・・同じ?」
「えぇ、私もさんが好きだと訳しました」




静かな廊下に響いた柳生の声は私の全身を痺れさせた



「私とお付き合いをしていただけませんか?」
「そ、それは・・英文の訳?」
「いいえ、さんだけに向けた私の言葉です」

柳生が真っ直ぐに私を見つめる
ずっと願っていた事
柳生だけが好きだった自分
恋患いで溜息しか出なかった毎日






誰もいない廊下で静かに手を繋いだ

「はぁ〜」
「また溜息ですか!?」
「うん。溜息」
「何故でしょうか・・?」
「それはね・・・」





幸せすぎるから







_END________________

24. 気付けば溜息 恋患い
  素敵な企画に参加させていただき感謝しています。
  ありがとうございました(07/10/15) りんだまん