いつだって君は僕の味方




「しゅうすけぇ〜〜」
、今日は何?」

周りの女の子達なんて気にしないで私は青学のテニスコートへ一目散、黄色いボールを追ってる不二周助を呼ぶ。

手塚くんの眼鏡の奥の切れ長の眸はきっと私を睨んでる。
だからあっかんベーってしてあげると眉間が険しくなる。

タカさんはアレって顔をしてから優しく笑って手を上げてくれる。

桃城くんは遠慮なく言うんだよね。
さん、また来たんですか?ご苦労っすね。」

海堂くんは礼儀正しい、バンダナを取ってペコッと会釈する。
他校の男テニのマネに対してのものなんだろう。
育ちがいいんだろうな。。

おーい、乾くーん・・・私が来た途端にノート広げるのは止して。
書き込んでる内容、どう考えても私のことでしょ。

大石くん、胃を抑えるのは止めて罪悪感を感じちゃうから。


エージも遠くから叫ばないでね。


ちゃーん、また佐伯と大喧嘩したのかにゃぁ〜〜!」
「エージ!余計なお世話だぁぁぁ!!」


「また・・・なんだね。」
その叫び声にため息を吐く周助。







「だって、だって・・・」
「毎年のことでしょ、」
「四年に一回の周助にはわかんないよ。」
「それって、失言だよ。」
にこっと笑う表情と台詞がかみ合ってないよ、周助。
「でも、虎次郎は校門前で他校の子が待ってるし。その後は駅前だよ。立海の子が来てたし。神奈川から千葉なんて小旅行だよ。」


すっかり汗をかいてしまった紙コップを手にしてストローに口をつける。
「サエと喧嘩するたびに青学に来るも人のこといえないんじゃない?」
「うっ・・・」
言い返せない。



中三の収穫祭のときに一緒に実行委員になってからそのまま付き合い始めたんだけど好きだって言われたのはつい最近。
は去年の誕生日に何をあげたの?」
「え・・・と。」
「答えられないよね、あげてないから。」
「申し訳ございません・・・」
「僕に謝られても、困っちゃうな。」


でも、マネと部員。
それ以上は望めなかったから、虎次郎のことで躓くと私は彼の幼馴染の周助を頼ってしまう。
さっきはあんなことしたけど、気難しそうな手塚くんとも試合会場なんかで会うと普通に話すし。




「どんなつもりで私に好きなんて言ったのかな?」



周助はパタンと携帯を畳んでくすっと笑う。
「好きだからじゃない?」
「わかんないよ、バネさんかいっちゃんあたりに言われたのかもしれないし。」
はぁ・・・とテーブルに突っ伏すと周助の手がぽんと私の頭に置かれる。




「周助は優しいね、周助みたいな人を好きになれば良かったのかな?」
頭に置かれた手のひらがピクリと動く。



「だって、周助はいつも私の味方だもん。」



周助のクスクス笑いが聞こえる。
笑い事じゃないよ・・・



「だってさ、さぁ・・・どうしようか?サエ。」


─ サエ・・・って、



恐る恐る顔を上げると・・・
「だけど、は俺の味方だよね。」
満面の笑みで私の頭を撫でるサエの姿。




「ど、ど・・・どうして・・・!」



いつから居たのかと聞けば。
「‘だって、’あたりから?」



─ それって始めからじゃない!



「サエ、のことフリーにし過ぎだね。」
「不二、俺も今それを反省してるところ。」



二人とも顔は笑ってるけど、声が一オクターブ低い気がするんですけど。



「じゃ、帰ろうか。」
サエの言葉に促されて席を立てばヒラヒラと周助が手を振る。
「また、おいでよね。」


その一言に虎次郎が苦笑い。
「その心配は無いから。」








一緒に電車に乗ったけれど、千葉の海沿いへ向かう電車はそれほど混んでいない。
手はしっかり繋がれているけれど黙ったままの虎次郎と言葉を捜す私。


「いつも一緒に居てくれたから、安心してた・・・俺。」
「え?」
は俺以外を選んだりしないって、自惚れてた。」


車窓に流れていく灯りを見ながら虎次郎はゆっくり話し始める。
「不二にを紹介したのは俺だし、些細な喧嘩して不二に泣きつきに行くのも仕方ないって。」
それでも、誤算だったのは不二を介して青学のメンバーと親しくなったことだと。


「この前の選抜の予選会場で手塚と仲良さそうに話している姿はさすがに堪えたな・・・」
笑おうと口を歪める虎次郎を見て・・・私は悲しくなったけれど言葉は裏腹。

「虎次郎がいけないの。私は悪くない・・・!いつも女の子に囲まれて私に向けるのと同じように笑うからいけないのよっ。」
声を殺して訴えようとして駅に着いた。
虎次郎が抱きかかえるようにして私をホームに下ろしてくれたけれど。


改札を抜けて、ロータリーの横の公園で私達は向き合う。
虫の音が聞こえて揺らぐような薄暗い外灯が点っている。



虎次郎は私の手を離さない、それが恥ずかしくて嬉しかった。


には同じに見えたんだね。俺は区別してたつもりだけど・・・ごめんな。」


謝るのは、私だ。
虎次郎の17回目の誕生日をこんなにしてしまったから。




「フリーにするからいけないんだよ・・・!」
「うん、」
「私をフリーにしないでよ。」
「もう、しないよ。だから・・・も、」



─ 駄目だよ、俺をフリーにしちゃ・・・



繋いだ手の暖かさに私はやっと気づいて。
引き寄せられる力のままに虎次郎の胸に収まる。




「お誕生日、おめでとう。」
虎次郎の心臓に唇を寄せて、小さく呟くだけ。




そして、
「ありがとう。」
虎次郎の声は私の唇に重ねられていった。

Fin.

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D:映美(えみ)

「brihigh」さまへご笑納
2007.10.01/亜奏夜羽