To share my love with you

恋心に似た、恋心

「どーしよ。」
「どうしようもないんじゃない?」

アドバイスする気がないのなら黙っていてくれないだろうか。楽しそうにニコニコ笑いながらいるのは絶対にわたしが困っているのが楽しいからだ。どっちかというといつも反対の立場にいるような気がする。小さくため息をつけば、今度こそ決定打、というように彼には珍しく声をあげて笑い出して教室の視線を独り占めすることになる。それでも彼は笑い病まないのだから恥ずかしいこと限りなく、思いっきり教科書で頭を叩くと、壊れたように笑いだしたのでそっとしておくことにした。隣にいた菊丸の顔は見るも哀れで何だか可哀想だった。多分この不二を見たのが初めてなんだろう。悲しいことにわたしは始めてじゃないけれど。

 いつ笑い終わるかも分からない彼を置いておくと、菊丸に話しかけてみた。哀れなことに片手に持っていたパックジュースが落下しそうだったので支えなおしてやると、「、あああれ・・!」と本当にかわいそうなことに泣きそうな顔でこっちを見てきた。
「残念だけどあんな不二を見るのは初めてじゃないんだよね。すぐ戻ると思うよ。ほかっておくといいよ。」
こくこく、と小さく頷いて、「そんでどうすんの?オチビと。」と今の話題そのものを投げかけてきた。このコンビは他人を気遣うこということを知らないのか。(いや期待はしてなかったけれど)

数日前のことだ、中庭を不二を一緒に歩いていたとき、(昼食を買いに行った教室までの帰り道だ)柱に不二の後輩でもあって、今年の新ルーキー、越前が立っていた。何してんだろ、と思いながらも隣の不二に構わず「おうじ?」と話しかけると、「さん。」と呼ばれて、しかもその目が真剣だったものだから、思わず「ど、どうしたの?」と聞いたのが終わりだったのだ。一応ここで言っておくと、人は昼食を買うために沢山人がいるわけで、その中には当然越前ファンの人もいるわけで、だからつまり全校生徒の半数はいるんじゃないかというくらいの人がいるところで、彼は堂々と何も怖れることなく、「付き合ってください好きです。」と告白劇をしてみせたのだ。一瞬の呆然の後、「くっ」という不二の笑いを堪える声で我に返る。さっきまでの周りの喧騒がウソなんじゃないかというくらい静まり返った空間の中、ただ黙ってわたしの顔を見てくる越前の眸に困惑したわたしの顔が映っていた。

「………王子。」
「何スか。」
「、それは、その気持ちは、きっと「恋愛じゃないとか言ったら怒りますよ。」」

図星だ。先に言われてしまった台詞に今度こそ、沈黙する。それしか考えていなかった。別に彼の告白を流そうとしたわけじゃなくて、本当に、それしか言えなかったのだ。ぐっと詰まったわたしを庇うように、越前。と隣から不二の声が響く。思わず不二に視線をやると、不二はにこりと笑ったままで、「このままだと昼食食べれなくなるから、後にしてくれる?」とこの気まずすぎる告白劇に終止符を打った。その後はもうパニックだ。やっと我に返った女子や男子やらでもみくちゃにされそうになるのを不二と一緒に教室までダッシュ、菊丸を引き連れると音楽室へ駆け込んだ。鍵をかけて完全封鎖だ。何が起こったのかいまだ完璧に整理が出来ていない頭ともっと何がおきたか分かっていない菊丸と多分この事態を一番理解しているだろう不二と三人で暫く言葉もなく沈黙だけで空間を護った。 はっと頭で理解できたときにはもうランチタイムが終わる5分前。強制的に授業休校だ。

 あまりにも突然すぎた告白劇から一週間、未だにわたしは答えも出せずにいたし、越前と顔を合わせることも出来ずにいるのだ。返事出来ない曖昧な態度で彼に会うことは失礼だと思ったし、何ていうか、あんな交わし方をした自分を責める自責の念でそれどころではなかったのだ。不二から聞いた話、あの日部室ではその話で持ちきりだったらしい。けれど別に越前はふざけてないよ真剣だよ、なんてあんな真剣な顔で言われれば更に自責の念が抑えきれない。どうしてあんま交わし方をしたのか。本当にそれしか思えなかったのか。なんてことを、もう、わたしは。

さ、そんなに真剣に考えること?」
「煩い菊丸黙れ。わたしは今自責の念で死にそうだよ。」
「(…。)だって好きか好きじゃないかだろー?」

だからそれが分かっていれば苦労しないんだよ。今まで王子はあれ、弟みたいな感覚だったし、相手も多分そういう感じじゃないかと思っていたのだ。こう見えたって相手の好意を気付くのには慣れているし、幾つも告白を流してきたことはある。けれどどうしたって越前にその気持ちが見えなかったのだ。どうしてあんな告白をされるのかも、どうやってそれを伝えたらいいのかも、どうったら彼を傷つけずに済むのかも分からない。

  この気持ちを騙して、彼と付き合って、本当に好きになるのを待つか。

一番の最善の方法に思われたコレは、未だに実行する勇気がない。膝に埋めるようにした頭は色々考えすぎてパンクしそうだ。もうすぐ昼食が終わることを時計で確認して、立ち上がる。どっかいくの?という不二に言い訳ヨロシク、と返して、そのまま扉から出て行く。授業を受けるような気分じゃない。どこか気持ちよく寝られるところはないかと考えて、中庭に足を向けた。


*

「わたし、リョーマくんのこと、好きだよ。」 っと聞こえてきたのは5限も始まった10分後くらい。木の上で寝ていたわたしは思わず落ちそうになって慌てて体を支える。いやいやいやいやいお前ら何でこんなところで告白劇やってんの授業中だからね授業中!いやいやいや授業うけようぜしかも何で王子だよ!よりにもよって王子かよ!誰だ中庭で寝ようとか思った奴!あっわたしだった。 黙りこんだ越前に我慢が出来ないように相手が口が開く前に、だ。バランスを崩したわたしの体はまるで宙ブランコみたいに枝を足にひっかけてぶら下がる感じになって、つまり、お二方に見つかったのだ。「っぎゃああああ!!」という豪勢な悲鳴と共に。

「「……………………。」」
「いたっいってえええええ!うっわいってええええ!!」
「「……………………。」」

ぎゃんぎゃん叫ぶわたしは気づかない、目の前のお二方に気付かない。この状態じゃ見えないが、絶対に怪我してる。擦ってる。だってすげー痛いもん!っつう、と一言呟いたとき、くすくすと笑う声が聞こえてきて、目をあけた。
逆さ状態で映る越前リョーマの顔。「うっわああああああ!!」と今度は確実な奇声をあげて木から落ちる、そう落ちる!

「何してんスか。」
「見てわかんない?お昼ねよ、お昼ね。っつかお前ら授業中でしょ、授業行きなさい。」
さんは?」
「だからお昼ね。授業なんて受けれるかって話だっつの。」

ポカン、としている女の子と、そこで目が合う。いきなりのわたしの出現にきょとん、としていたみたいだが、我を取り戻して、「あああ、あの、先輩!」と緊張気味に名前を呼ばれた。多分言われる内容も分かってる。そしてそれにどう答えるのかもまだ纏まってはいないけれど。 キレイな顔、穢れのない双眸に映ったわたし。目尻に溜まる涙。これほどまでに美しいのに、何故わたしはこの子に傷つけるようなことしか言ってあげられないのだろう。

「越前くんのこと、どう思ってるんですか…?」
「ちょっ、何てこと「好きだよ。」」

越前の声を遮る。二人の驚きの視線がこっちに向いて、柔らかく微笑んでみた。わたしはどっちかっていうと、みんなでバカ騒ぎをしたいなあって思う人で、変化を嫌う人種の人間だ。何時までも同じではいられないと感じていながらも、同じを望む。矛盾しながらも、心地いいまでの今までを知っているから、気持ちを無視してまでも手に入れようとする。

「凄く、好きだよ。でもそれが恋愛なのかは分からない。でも、彼を誰の傍にも置きたくないってことくらいはね、分かるんだ。」

それがどういう感情なのかは分からない。恋愛とも違うような気がするし、友達とも違う気がする。いまだわたしの中でわだかまるこの感情の名前は知らないけれど、彼が違う女の子のそばにいるのは嫌だし、出来ればわたしの隣で笑っていてほしいと思う。

「それって、恋愛感情じゃ、ないんですか?」
「違うね。はっきりといえる。違う。けど、ごめん、諦めてほしい。君にリョーマはあげれない。」

誰も傷付くことを嫌うわたしは、誰も傷つけない道を進みたいっていつも思う。けれど無駄なことも知っていて、ここに来て彼を離したくないと強く願う自分の気持ちに気付く。彼にとって、愛してくれる女の子の方がいいと思うのに、その道を敢えて遮ろうとしている。なんてコトをしようとしているんだろうか。苦笑を浮かべながら、「ごめん、」と囁くと、目の前の女の子は、小さく笑って見せた。
 小さく首を振って、「ありがと、越前くん。聞いてくれて、ありがとう、それから、ごめんね。」と可愛らしく笑って、「ちょっ、と」と引き止めるわたしの声にも構わず去っていってしまう。

必然的に二人になった空間で、黙り込んだわたしに、「さん。」と呼びかける声。うあ、!ばっ、と後ろを振り替える。てっきり怒っているかと思っていた彼は意外にも微笑んでいて、不機嫌な感じは見受けられもしない。どうかしたのか。彼がしゃがんで、座り込んでいるわたしに視線を合わせるようにする。

「あ、あのですね、王子、ええと、何ていうか、あの、すいません……、」
「俺さ、今はこのままでいいよ。さっきの言葉、ありがたくもらっとくから。」
「え。(わたしなんていった?)
「だから、そんな考えこまないでくれる?俺が困る。」
「………スイマセン。」

だからさ、謝罪の代わりに、と凄く楽しそうな笑みを王子が浮かべる。思わず後退ってそのまま教室までダッシュしてみたいような(っつかしたい)衝動に駆られるけど、そんなことこんな楽しそうな王子を前に出来るわけがない。な、なんでしょう、引き気味の声だったことが自分がよくわかっている、わかっているんだよ!だから突っ込むなよ!

「まずはその王子ってヤツやめてよ。」
「ええええええマジっすか!何で呼べばいいんだよ!」
「普通に名前で呼んでよ。」
「名前?!何で?!王子の方が凄いじゃん!」
「名前呼んでくれないの?別にいいじゃん、好きになれとか言うわけじゃないし。」
「…………リョー、ま。」

小さく、名前を呼んだだけなのに。本当にしかも凄く歯切れが悪かったのに、彼が笑ったように見えた。いや、笑ったんだ。それだけでこころが軽くなって、多分そんなわけないのに、今はこれでいいと譲歩してくれた彼に本当にアリガトウと思う。そういう意味では、彼の方が大人なのかもしれないなあ、なんて思って、ゆっくりと立ち上がる。

「っていたあああああ!!」

怪我をしていたことを思い出した、5限終了5分前。



0707 (彼女のそばにいるのが、不二さんっていうことくらい、見ていれば分かるから。)
brihighに提出させてもらったリョーマさん。ありがとうございました!!