19. 君が目覚めるその前に






放課後の屋上。
人がいないと思って来てみれば、


「お姫様が、眠ってる」


ベンチに座る君はすやすやと寝息を立てていた。


「こんなところで寝ていたら、風邪引いちゃうのにね」


俺がこんなことを言っても目を覚まさない。
どんなに心地のいい夢を見てるんだろうね。
笑顔を浮かべて、すやすや眠る君。
隣に座って、ゆっくりと俺に寄りかからせる。
少しでも楽な体制になるように。
そして、頬に手を添えて、空いている手で髪をどかして、


額に口付ける。


くすぐったいような気持ちで笑みがもれる。
夕暮れに染まった君の頬は赤みがさしていて、いつもと違って見える。
愛しい君だから。
さぁ、考えようか。


君にこの光景をどう伝えようか。
君にきれいな夕日を眺めていた時間をどう伝えようか。
どうしたら君は満面の笑みで笑ってくれるか。





君が目覚めるその前に






「おはよう、
「おはよう、精市」










 * * *

素敵な企画に参加できたことを嬉しく思います。
つたない文ではありますが、精一杯書かせていただきました。
本当にありがとうございました。

Photo by 水珠