部活をサボった時の、俺だけの特等席。


















今日は部長会議とかで南も遅れてくるって言ってたし、伴じぃも何か知んないけど用事があるとかで出かけてる。
そうすると東方は指示とか出さなきゃだし、室町くんや壇くんじゃ俺を捕まえるのには役不足。



「やっぱ俺ってラッキー。」



お陰で今日は五月蝿く鳴り響く携帯も、校舎を歩き回る南もない静かな時間を過ごせるんだから。
あとはここにお菓子とか漫画とかあれば完璧だったのにね。


まぁ、コレでも十分ラッキーだけど。


最上階にある知らないクラスのベランダに座って、柵越しに見下ろした校舎には部活動中の生徒の姿がちらほら。
走ってる子、歩いてる子、重そうに荷物を持ってる子。
みんな俺がここから見ているのなんて知らない。



「あ。」



向かいの校舎の一階に南が見えた。
どうやら部長会議は終わったみたい、俺より高い身長が走り出しそうなくらい早足で廊下を歩いている。


部活の様子でも気になるんだろうな。
いつも文句ばっかり言っているけど結局南って部長向きなんだよね。
面倒見がいいし真面目だし。


そんなわれ等が南部長の少し後に出てきたのは、南よりも俺よりもずーっと小さい女の子の影。



ちゃんも部長だったんだー。」



フルネームはちゃん。
同じクラスのちょっと離れた席の女の子で、話したことはまだあんまりないんだよねー。
低すぎないけど小さい身長にぴょんぴょんと跳ねた肩くらいの長さの髪の毛の大人しい子。
男子と話すのは苦手みたいで、大抵は仲の良い女子と笑っているのを見かける。


どっちかというと後手に回るタイプの子で、自分の意見を言うよりも相手の意見を聞くことの方が多いんだろうなーって思う。
俺みたいなのと話したら俺ばっかりしゃべりっぱなしになるのが目に見えてわかる。



「南にサボってるのバレる前に逃げとこっかなぁ・・・。」



でも逃げるのもめんどいなー・なんて思っていたら、不意にちゃんが俺のいる方を見上げた。


一瞬俺が見てたのがバレたのかと思って首をすくめたんだけど、よく見てみるとちゃんが見ているのは俺がいるベランダよりもずっと上の方。
校舎の隙間から見える晴れた青い空だった。


窓際でなく、教室側の廊下を歩いているちゃんの表情は暗くてよく見えないけれどなんとなく寂しそうな表情をしている気がして。
隙間の空なんて気にとめない会議に参加した他の部長達が、ちゃんを追い抜かして、どんどん少なくなっていった。
ゆっくりゆっくり、ただ一点を集中して見続けるちゃんの目には何か訴えてくるようなモノがあるように感じた。


部長って柄じゃないのにやってるってことは、きっとならなきゃいけない状況に追い込まれたんだろう。
部活動が強制じゃない山吹だから、そんなに有名じゃない部活だと学年に一人ってのもあるんだって誰かが話してた気がする。


きっとそんな感じで引き受けてしまったんだ、とすんなりと理解出来た。



「ちっちゃい背であんなに高い空を見なくても、綺麗な青はすぐそこにあるもんだよ。」



頑張って頑張って、あんな高い場所を目指さなくても君に見合った場所がちゃんとあるはずだから。










小さい背中に色んなもの背負って、


それでも強がる君が愛しい
(肩くらいなら貸すから、たまには休んでもいいんじゃない?)