折角の休みに届いた「SOS」のメール。
何かあったのかと必死で家を飛び出した。
そこで見つけたのは。
山のような課題と、 キミ。
山のような課題
「…何やってんだお前。」
「跡部…助けて…!」
春休みも今日で終わる。
家にまで呼び出されて跡部が見たのは、何十枚もあるプリント。
そして半泣きの幼馴染み。
「こんなにあったかよ、数学の宿題。」
「宿題プラス、この間のテストの赤点者に対する課題。」
「…どれだけ赤点取ってんだ。」
そう言いながら跡部は幼馴染み−−の元にあるプリントに目を移す。
どうやら全く進んでいないようだ。きっと今日手をつけ始めたのだろう。
「テメェ、いきなり変なメール寄越したかと思えばこんな用件かよ。」
「あたしにとっては重大な問題だ!…良いもん、一人でやるもん。跡部に頼ったあたしがバカだったよ。」
「あーそうだな。此処まで宿題溜めてる時点でバカだお前は。」
大袈裟に凹んだフリをしながらは止めていたシャーペンを再び動かす。
しかし次の問題へは中々進まなかった。否、進めなかった。
呆れたように溜息をついてから跡部はの近くへと寄る。
「…つまり、この値をxに代入すりゃ良いんだろ。」
「本当だ!解けた!」
「ンな簡単な問題も解けねぇのか。」
「ウルサイ!頭良くなくて悪かったね!」
「全くだ。」
用事の無くなった跡部は不機嫌なにこれ以上教えても更に怒ること間違い無いと思い、近くのソファーに座ってそのまま読書を始めた。
春の日差しが暖かい。
どれほど経っただろうか。
跡部は読書を終え、どれほど進んだだろうかとを見た。
しかし、その光景に思わず彼は目を擦る。
なんと彼女は机に突っ伏して寝てしまっていたのだ。
「…まぁ、暖けぇから仕方ねぇか。」
小さく溜息をついて跡部は規則正しい呼吸をする幼馴染みの頭を愛おしそうに撫でた。
目を細め、口元は自然に緩くなる。 その表情は彼の幼馴染みに対する想いを表していた。
それから跡部はまだ溜まっているプリントへと目を移した。
「さっきのとこから変わってねぇじゃねぇか…。」
手元にあったシャーペンを持ち、跡部はプリントにさらさらと式を記入し始める。
意外と簡単だったプリントはすぐに終わった。
まだ寝ているを起こすのは悪いと思い、跡部は帰ろうと決意した。
しかし…ただ帰るだけではつまらない。 そんな意地悪い思いが彼の心に芽生える。
ニヤリと企んだような笑みを浮かべれば、跡部は最後のプリントの一番下に文章を書いた。
満足げにその文章を眺めた後、静かにの家を出て行った。
時計の針が午後の八時を指した頃、空腹を感じては目を開けた。
「跡部…?あれ、夢……?」
小さく首を傾げながら幼馴染みの名前を呼ぶ。
最初は寝ぼけ眼でいたものの、数秒すると自分が課題に追われていたことを思い出した。
「やばい、今からやったら終わらないよ…!」
は慌てて一枚のプリントに向かう。
異変に気付いたのはそのときだった。
「…やってある。これも、これも…!」
寝ぼけつつも自分がやったのだろうか、とも最初は思ったがこれは明らかにの字では無かった。
この整った字は確かにのよく知る人物のものだった。
「跡部がやってくれたんだ…。」
その人物を探そうとは周囲を見回した。
しかし跡部はもう部屋には居なかった。
それもそのはず。はかれこれ六時間以上寝ていたのだから。
「…全部やってくれてる。」
プリントを一枚一枚見ながらは感嘆の息を漏らした。
そして最後のプリントの最下部に跡部の字で何か文字が書かれていることに気付いた。
「……っ…!」
その言葉はの頬を紅く染めた。