同じクラスじゃない、ってこんなにつまらないこと。 でもそれは買収でもしない限り、あたしにはどうしようもできないこと、だともわかっている。 それでも、少し不機嫌になってしまう要素のひとつに値するけれど。 同じクラスなら、絶対穴が開くくらい観察するのに。 いや、それは一歩間違えればストーカーになるから、ちょっと抑える。 でも、ホントにクラスが違うって不便だ。

「じゃあこの問題を
「ぅえ!?は、い!ってなに、え、先生!問題なに!」
「お前聞いてなかっただろ」
「うん!」
「はっきり言うな」

どっとあたしと先生の会話に笑い声が漏れる。 だけどそんな恥ずかしいことじゃない、これも毎日続けば恥ずかしいよりも問題を探すので手一杯だから。 教えてもらったページの問題をその場で適当に解いて、適当に答えを言えば、そのあまりの間違いにどっと笑い声が大きくなる。 聞いてないから無理!と叫べば、放課後課題やると最悪な回答が降ってきて。

「むり!無理!放課後無理!」
「じゃあこの問題の後ろから5人なー」
「ちょ、先生!人の話聞こうよ!」

立ち上がって抗議すれば、あたしの存在を無視するように授業が進んでいく。 ああ、もう、なんていうか。 冗談なのか冗談じゃないのか区別できないことを言わないでほしい。 まぁたぶん、冗談なんだろうけれど。 そう思いながら席に座り直すとポケットの中にいたケータイがその存在を示してくる。 授業をしている先生の注意があたしに向いていないのを確かめて、ケータイを開けば向日岳人の文字と「そっち笑ってるけどなんの授業?」という簡易メール。 授業中にくる、こんな簡単なメールでもふわふわと浮き上がりそうなくらい嬉しい。

「おーいー書いてるかー?」
「書いてる!書いてるって!」

ペンを握ってノートに乱雑に走らせる。 時々黒板を見て、傍から見れば写しているように見えるだろう。 芯はまったく出てないけれど。 それを数回続けて先生の視線がズレたら、ケータイを机と自分の身体の間に隠して、返信を打つ。 授業名と向こうの授業が何かを聞いて、それから、さっきの出来事を。 数分すれば、そのメールの返事が返ってきて、繋がってる、なんて思ってしまう。 この数十メートルの距離を越えて、こんな小さなケータイで繋がってる感覚がおもしろくて。

「…、余裕みたいだな」
「!え、ええ!ぜ、ぜんぜん!ここ!ここ全然わかんない!」

どうやら完全に目をつけられてしまったようだ。 適当に捲った教科書がちょうどよく今日の授業内容だったことに奇跡!と心の中で喜びながら、まるで1対1の個人授業のように目の前の席に座る先生にため息をついて。
視線は机の上、だけど片手は机の下。

「ごめん、けじんじゅぎょうがかいしさるました」

あとで確認したメールはこんなひらがなだけの文章になってもいない、向日くんの笑いを誘ってしまったものだった。






「こんなの毎日じゃないからね!」「え、毎日じゃん」「ぅえ!?(そんな風に思われてた!?)」




授 業 風 景 の 一 コ マ